「資産運用立国の更なる推進について」と題して金融庁長官/伊藤豊氏から講演いただきました。

主な内容は、NISAの普及状況、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の活動、および地域における金融リテラシー向上への取組の3点に集約されます。
1. NISAの普及と資産形成の現状
新NISA制度の開始(2024年1月)以降、利用が大幅に拡大しています。
* 口座数: 2025年末(速報値)時点で2,826万口座に達しました。
* 買付額: 総買付額は年々増加しており、2025年末には71兆円まで成長しています。
* 背景: 政府は「資産所得倍増プラン」や「資産運用立国実現プラン」を通じて、家計の安定的な資産形成を推進しています。
2. 金融経済教育推進機構(J-FLEC)の役割
2024年4月に設立されたJ-FLECは、官民一体となって金融教育を推進する中核組織です。
* 組織構成: 政府(金融庁)、民間団体(全銀協、日証協等)、金融広報中央委員会から事業や人員を移管・承継して設立されました。
* 教育活動: 小学生から高齢者まで、各ライフステージに応じた出張授業(講師派遣)を実施しています。
* 認定アドバイザー: 2025年9月末時点で1,314名が活動しており、その88.4%がFP(ファイナンシャルプランナー)の資格保有者です。
3. 地域における推進体制
地方公共団体や地域金融機関と連携した金融リテラシー向上の取組が強化されています。
* 地域金融機関の役割: 高等学校への出前授業など、地方自治体と連携した取組が重要視されています。
* 戦略的な検討: 「日本成長戦略会議」の下に「資産運用立国推進分科会」を新設するなど、金融分野の成長戦略を検討する体制が整備されています。
「日米の住宅市場と住宅金融市場」と題して、ニッセイ基礎研究所金融研究部客員研究員/林正宏氏より講演いただきました。
主な内容は以下の通りです。
1. 日米の住宅金融市場の比較
* 金利タイプと資産構成:
* アメリカ: 住宅ローンの約9割が全期間固定型で、家計資産は株式がメインです。これはインフレに適合的な構造と言えます。
* 日本: 変動金利の利用が約7割と多く、家計資産は預金がメインです。デフレに適合的な構造となっています。
* 市場の動向:
* アメリカでは、FRBによる利上げに伴い30年固定住宅ローン金利が上昇し、2023年10月には7.79%に達しましたが、その後低下傾向にあります。
* 日本では、マイナス金利解除や追加利上げなど「金利のある世界」への移行が進んでおり、金融リテラシー向上への取り組みが強化されています。
2. 日米の住宅市場概観
* アメリカ: 2010年以降、世帯数の増加に対して住宅着工が追いつかず、供給不足の状態が続いています。そのため、中古住宅価格の中央値が上昇し、ローン返済額が家賃を上回る逆転現象も起きています。
* 日本: 住宅着工の戸当たり床面積は縮小傾向にあり、単身世帯や夫婦のみの世帯が増加しています。一方で、高齢層(70歳以上)の持家率は上昇していますが、若年層(30代)の持家率は低下しています。
3. 首都圏マンション市場の現状
* 価格高騰と「億ション」: 新築分譲マンションの価格は高騰しており、発売戸数に占める「億ション(1億円以上の物件)」の比率が増大しています。
* 需要の背景: 東京都への転入超過や共働き世帯(パワーカップル)の増加、さらに円安によるドル換算での割安感から訪日外国客や外国人投資家の需要も影響しています。
* ローンの変化: 物件価格の上昇に対応するため、住宅ローンの返済期間が35年を超えるケースや、夫婦で組むペアローンの利用比率が高まっています。
結論としての「トリレンマ」
* 住宅のトリレンマ: 住宅選びにおいて「立地」「面積等(広さ・設備)」「価格」の3つをすべて満たすことは難しく、どこかで妥協が必要な状況(不動産に掘り出し物なし)であることが示唆されています。
短時間で金融庁の最新の取り組みから日米の住宅市場まで学ぶことができ、大変勉強になりました。


































