「家族信託とこれからの相続問題〜他人事ではなくなってきた〜」と題して、司法書士の上木拓郎氏からお話いただきました。
8,489,000=2018年の空き家の数、空き家率13.6%
不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない、所有者の所在が不明で連絡がつかないなどの理由により、相続登記の義務化が予定されているとのこと。
法定相続分による相続登記、相続人申告登記、相続土地国庫帰属制度=土地を手放す制度(原野20万円、宅地80万円)などを説明いただきました。
相続相談の傾向として、空き家対策特措法の施行以降、名義変更がされていない不動産に関する問い合わせが増加中とのことで、2つのケースについてお話いただきました。
ケース1、役所から突然通知が来る
相続放棄は、自分が相続人である事を知った時から3ヶ月以内でOK
ケース2、父が健在の間に不動産名義変更したい
兄弟から遺産分割協議書捺印、兄弟が亡くなっている場合はその子から
独身高齢者の終活の相談が増えているそうです。
法定後見制度の件数が伸びていない、その理由ですが、
・後見人は制度利用者(高齢者)の財産が減少するリスクがある行為はできない
・身内の方が後見人に選ばれるケースが減少している
・後見人への定額報酬の負担(年間40〜70万円)
などが考えられます。
そこで考えられるのが家族信託です。
信託財産を選び、契約内容に沿って管理、運用、処分します。
法定後見制度と違い、家庭裁判所への申し立ては不要で、財産管理をする人を身内から選べます。
事前に家族信託を済ませておくと、契約の内容により、
・信託財産は受託者のみで売却OK
・信託財産(不動産)の建て替えOK
・信託口座の預金から介護・医療費、施設費用などの支払いOK
不動産の所有権は、収益権、管理権、処分権に分解されますが、家族信託後は、委託者に収益権、受託者に管理権、処分権と分割されます。そのため、委託者がその後に認知症となっても、受託者が処分権を行使することには影響しないそうです。
また、収益権が移転するタイミングまで贈与税はかかりません。
家族信託がおすすめできる家族として、①親の現預金と年金だけでは先々が不安②面倒を見てくれている息子夫婦に子供がいない③認知症の奥さん、精神疾患があるお子さんがいる、などが考えられるとのことです。
空き家問題から法定後見、家族信託まで広くお話いただき、大変参考になりました。