著名な経済評論家の鈴木貴博氏の講演を拝聴しました。https://www.hyakunen.co.jp
『日本GDP世界第4位転落―このまま落ちぶれる前に何をすべきか?』と題して内容は多岐にわたりました。
・IMFによれば今年、日本はドイツに抜かれ世界GDPランキングの4位に転落する見込み。
・予測では2026年までにインドに抜かれることも確実。
・この先の新しい世界ランキングは、アメリカ、中国、ドイツ、インド、日本の序列に代わる。
・14億人の人口からなる中国やインドが日本を抜くことは仕方ないが、ドイツの人口は日本の3分の2で、ひとりあたりGDPでは日本はドイツのはるか下ということになる。
・「ひとりあたりGDP」で日本の国力を確認してみると、日本の地位は世界3位どころか大幅にその順位を下げていることがわかる。
・世界の国や地域を「ひとりあたりGDP」でグループ分けをすると、まず目立つのが第一位集団で、アメリカ、スイス、シンガポール、カタールなどの国々がこの集団に入る。これらの国々はひとりあたりGDPが8万ドル(約1200万円)前後と世界経済の中で突出。その共通点は世界から投資が集まる国だという点。
・二位集団はドイツ、イギリス、カナダなどのほとんどのG7加盟国や、アジア太平洋地域ではオーストラリア、香港、UAEなどの国が入る集団。これらはひとりあたりGDP5万ドル(約750万円)前後の国や地域。経済が順調な国々というのがその共通点。
・第三位集団はひとりあたりGDP3.5万ドル(約525万円)前後の国や地域。日本はこのグループに入る。欧州ではイタリア、スペインが、アジアでは韓国、台湾がほぼ同じ集団に入る。集団の特色としてはかつて世界一だったが落日を迎えた元先進国と、新興国から先進国グループ入りを狙う国々がこの集団に入る。
・ひとりあたりGDPを増やすためには3つの手段がある。①ひとりあたりの生産性を上げること②国全体の投資を増やすこと③成長を妨げるボトルネックを除去すること。
・一人当たりの生産性を上げるためにはDXなどのイノベーションでひとりひとりの生産性を上げることがわかりやすい対策だが、女性の地位向上もポイント。
・欧州ではすでに90年代に男女差別をなくす視点から配偶者控除が廃止され、納税は世帯単位ではなく個人単位に変更されるルールに変わった。
・その結果、欧州では男女平等の意識強化、男性の育児参加進展、女性の社会進出、女性管理職の増加と地位向上をもたらした。
・日本で同じことがおきれば「106万円の壁」「130万円の壁」で抑え込まれていた女性の労働時間も解放されるはず。
・日本では、モビリティ分野での社会変革が遅れている。日本はEV不毛の地と呼ばれるほどEVの普及は進んでいないが、それだけではなく、ライドシェアも無人タクシーもグリーンエネルギーも同時にすべてのことが遅れている。
・日本経済が仮に、2030年前後までに凋落を始めていくとしたら、その引き金になる可能性があるリスクはふたつある。
・ひとつがエネルギー不足。脱炭素を進めるためにはEV化が必須だとすれば、日本の電力供給量は少なくとも今の1.2倍に増やす必要があるが、日本の火力発電所は老朽化が進み、むしろこれからどんどん発電能力は減少するリスクを抱えている。
・もうひとつのリスクは日銀ショック。仮に、円の信認がもう一段階悪い方に進んでしまったらどうなるか。計算上は1ドル=215円になった段階で、日本は第三集団から脱落して第四集団に墜ちる。その集団にいる国々はギリシャ、ポーランド、ハンガリー、ウルグアイなど。
現在の日本の世界での位置付けと今後の展望を考える上で、大変参考になりました。