高名な経済学者で東京大学名誉教授の吉川洋氏の講演を拝聴しました。演題は「 デフレ・インフレと日本経済」
マイルドなデフレは経済の脅威ではない
アベノミクス/黒田異次元緩和は出発点から間違えていた
日本経済の不調はデフレが原因ではない
19世紀の米英独はマイルドなデフレも経済は好調
日銀の以下の主張に十分な根拠は示されていない
①量的・質的金融緩和の効果によって、デフレではなくなった
②量的・質的金融緩和は総需要を刺激して息の長い景気拡大に貢献
最近のインフレは海外からの輸入物価上昇が原因
2013〜2019年の日本の個人消費成長率は0%(米国2.4%、EU1.4%)
エンゲル係数(家計に占める食事の割合)が金融緩和以降、上がってきている
30代前半男性の有配偶率は正規59%、非正規22.3%
インフレ率は2%を上回っているが、こうしたインフレを望む人はいない
日本の問題は、デフレではなく、長期的な課題。なかでも深刻なのは少子高齢化
日本の人口は近年減少局面を迎えている。2070年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は39%の水準になると推計されている
社会保障の将来不安。84%が「安心できない/あまり安心できない」
国民負担率(税負担率+社会負担率)が2019年時点で45%
社会保障の給付と負担の現状(2023年度予算ベース)
予算134.3兆円(対GDP比23.5%)
給付)年金60.1兆円、医療41.6兆円、福祉その他32.5兆円
負担)保険料77.5兆円(被保険者41兆円+事業主36.5兆円)、公費53.2兆円(国36.7兆円+地方16.4兆円)、積立金の運用収入等3.6兆円
経済成長の源泉はイノベーション。日本企業はアニマルスピリッツを喪失
シュンペーターいわく、アイデアはあるけど金がない起業家/Entrepreneurを見つけて金を貸すのが銀行/Bankerの役割
1人当たり名目GDPは、2000年は日本3位、2024年は日本38位
世界競争力ランキング/企業の効率性は、2023年日本35位
近年の日本経済の状況が俯瞰できる良い機会でした。